「日本が好きなら、なんで日本ではなく、アメリカを選んだの?」
「アメリカのパスポートを取れたらいつでも日本に行けるし」
私の問いに高校時代の知人はそう答えた。こんなずるい人には絶対なりたくないと誓った。高校から大学3年まで勉学を極め、体も鍛えていた。日本に外人デブが要らないと涙を流しながら、空腹を耐えてグラウンドを走る記憶は今でも覚えている。
母国の文化を捨て、比較的に白紙の状態で来日し、国公立の大学に通わせていただいたが、基本的に公的援助を受けずに(もっとも受けたくても受けられない)、母国からお金を持参してゼロから生活を築けてきた。安倍元総理の高度人材制度のもとで社会人1年で永住権を付与されて、在日外国人の優等生だと自負していた。
そうした努力をしても、必ずしも周囲から認められるわけではなかった。むしろ感覚的にずっとイバラの道を歩いているような気がした。日本人の友達ができないとか、コミュニティの輪に入れないとか、私自身の人間性も関わっているし、日本人同士でも難しい課題を一旦置いておき、一部「不思議」なエピソードを紹介したい。
カフェのバイト
大学院の時、一時期神保町のあるカフェでバイトしていた。関西人の店長がいい人そうだけど、職場自体はブラックだった。サービス残業を強要されるし、バイトリーダー格の女の子もあたりがきつくて日常的に怒鳴られていた。一番納得できなかったのは、職場環境だけではなく、バイトの中で私だけいつまで経ってもレジを触らせてもらえなかったところだった。一方で、採用3日目の新人でもレジ研修を受けていた。従業員のうち、私以外全員日本人だったことから、どう考えても自分だけ「区別」されていたと思う。
就職活動
大学院1年目の後半から本格的に就活を始めたが、情報が全く入ってこないうえ、誰も助けてくれない時期が後半まで続いていた。学部から来日した一部の人たちを除き、私を含めた留学生たちは例外なく苦戦を強いられていた。日本人の同級生は通常10社ないし20社程度の応募で就活を終えたに対し、私は100社程度エントリーしたかと思う。打率が異様に低く、日本へ留学という経験に全力で取り込んだにも関わらず、それがなぜか「ガクチカ」として評価されなかった。
就活がうまく行かなかったのは、自分自身の準備が甘かったり、自己分析が足りなかったりするところもあるから、一概に言えないが、出身を理由で明確に応募を断った会社は数社あった。とくに某社の3次面接で「中国人を採用しないように指示されたので」を告げられたことある。
大阪時代
大阪で勤務していた時、私に異様に厳しい先輩がいた。会議の時にしつこく皆さんに「みかんくんに日本語関連の仕事を一切やらせてはいけない」を提案していた。最初に聞いた時に耳を疑うほど驚いて反応に困っていた。2回目で言われた時に笑いながら「そう言われたら傷つきますよ」を言い返したが、「いえいえ、私も英語が得意じゃないので、同じです」と譲歩してくれなかった。別の大先輩から「業務に全部日本語が必要なんだけど」と援護してくれたおかげで一旦この話題を流した。
このままだとキャリアの支障になるので、この先輩とプライベートで相談してみた。外国人向けの日本語試験だけではなく、日本人向けの高認試験の国語でもいい成績を得ているため、日本語で業務をこなすに問題ない旨を伝えようとしたが、それ以来むしろ先輩のあたりがきつくなり、日本語だけではなく、英語関係のダメ出しも増えた。最終的に課長が仲介に入ったが、仲直りすることはなかった。
離婚
私は前妻に何度も「中国人と結婚したことを知られたくない」を言われたことあるし、彼女の苗字にしないと帰化の面接で変なことを言うと脅かされたこともある。離婚騒ぎの激化とともに、「国籍のために私と結婚したでしょ」のように国籍を引き合いに出す非難が続いた。自分の場合、日本人の配偶者としてより、独身で帰化したほうが手っ取り早いと説明してあげても理解してもらえなかった。その家族も執拗に国際結婚だったからうまくいかなかったように「日本人はこうなのだ」だと論点をずらしたがっていた。
前妻が帰化後新しい戸籍を作るための「帰化届」への署名を拒んだせいで、帰化の完了手続きがなかなか進まなかった。市役所と相談しようと電話したが、コールセンターの人が電話を切りそびれて、「市役所に聞いても別にできることないよね」「外国人は日本人と離婚したくないでしょ(笑)」私への悪口が丸聞こえてしまった。
予備自衛官の面接で、なぜ日本に貢献したいかを聞かれた時に「日本社会に優遇されたから」と答えたが、これから誤解にならないよう言い方を変えたほうがよいかもしれない。よそ者の自分は国公立大を通わせてもらい、表舞台の一員として認めてもらって居場所を得た意味では私は日本社会に優遇されたと言えるが、それに伴う努力と犠牲もあったから、別にダイレクトで何かの恩恵を受けて楽にできたわけではない。
