この間、久々仲が良かった大学院同期に連絡してみた。彼は有力官庁に入り、度々新聞に載るレベルの案件に携わっている。国の頂点に立ち、日の丸を背負うキャリアに私も憧れを持っていた。一方、私は大学院にいた頃からスクールカースト下位で、民間就職組においてもギリギリ母校の顔に泥を塗らない程度にすぎなかった。私なんかもう相手にしたくないかもしれないと思って、恐れ恐れメッセージを送った。
予想外のことに、相手にされないところか、孤島で閉じ込められてようやく話し相手を見つけたように、返信が連発に来ていた。「もう無理」、これは最初の返信だった。やはり噂通り、毎日10時ぐらい働いているかと聞いたら、なんと午前2時だったそうだ。土日出勤さえあって、本人曰く、プライベートの時間はほぼ存在しない。かなりの激務なのに、残業代が1/4程度しか支給されないらしい。高圧的な労働環境だから、職場の人間関係もギスギスしている。
彼の悩みと比べて、私の普段会社に対する愚痴が幼稚すぎて恥ずかしい。たかだか1時間のサービス残業だけでぶつぶつ言うし、初ボーナス0.5ヶ月分が欠けただけで怒る。休憩時間たくさん、仕事の密度が低いところや、基本給が高くて1.5ヶ月分でも平均値を抜くといった背景に目を向けない。自分の中で妙にBig4の給料をベンチマークにしているから、同年季より下回ればすぐ不快感が出る。このような待遇面を置いておき、本当に今の会社がありがたいと思ったポイントは別に2点ある。
まず、同期競争から逃れたところだ。私に同期との競争は存在しない。先輩は入社10年目のベテランだから、競争にならない。じきに部署の後輩が出来ても私より年季が上の人に違いないから、競争にならない。世間のいう「出世」かどうか分からないが、かすかに自分のキャリアパスはもう決められたような気がする。競争がない職場、人間関係はとても優しくなる。私は競争が大嫌いだ。負けたら当然落ち込むが、何より勝ったとしても相手が悲しくなるから嫌だ。私は相手がハッピーになって初めて自分もハッピーになるかもしれない簡単な人なのだ。上に登るために人を傷つけることがとてもできない。
そして、こんな規格外の私を容認するところだ。仕事に必要な知識やスキル、私は1つや2つ持っているかもしれないが、それ以外はいずれ人並み以下だ。海外に育っていたから、当然一部の常識が分からない。何より人を接する力はもう最悪だ。いつ、だれに、なにを話せばいいかとても難しい。業務連絡が得意が、雑談のタイミングをなかなか掴めない。そもそも人の名前と顔をなかなか覚えられない。これは完全にコミュニケーション以前の問題だ。仕事と勉強ができても、自分のペースややり方に従わないと実力を発揮できない。学生ならまだしも、社会人としてどう考えてもわがままの多い自分だが、職場はそれらをまるごとに受け入れてくれた。
そもそもアメリカで手を差し伸べてくれたこの会社を安直に裏切って良いのだろうか。異国でのかけがえのない想い、全力で根回ししてくれた人事部を裏切って良いのだろうか。年収100万円か200万円アップのところにいけても、本当にこの自分に寛容的なこの会社を裏切って良いのだろうか。
ついに給料で物事を測ってしまう。繁忙期に入ったらまた会社に不満を持つかもしれない。いつか本当に他の会社に転職するかもしれない。今の自分にとって、この会社はすでに最善の居場所だ。

