キャリア的に私の可能性はすでに終わった。今の自分にとって、全く関係ないキャリアに切り替えることはほぼ不可能と断言できる。このような話を他の人に語るたびに、「まだ若いし、全然いけるよ」や「海外だと30代から全然違うキャリアを歩む人が多いよ」など、慰めのような言葉をかけられる。皆さんの言い分は特に間違っていない。30代、いや、40代でも全く新しい仕事を始めることは可能だし、全く珍しくもないと思う。しかし、その新しい畑でどれぐらい深堀りできるか、どんな成果を残せるかかなり微妙だ。
簡単な一例を示そう。私の前の上司はかなり優秀な方だった。聡明でハードワーカー、早慶クラスから新卒入社してわずか5年で課長になった。今海外に赴任しており、20代終盤の時点でかなりの花道を歩んでいる。それに対して、私は29歳にしてようやく中途入社し、3年目に入るが、4年間働いて係長になれるかどうかの調子だ。課長は仮に今後少々仕事のペースを落とし、上昇志向をそれほど持たなくても私より出世するだろう。つまり、キャリアに限って私より7年も早くスタートを切った課長は、私より多くの余裕を持ち、私より専門性を磨けられるし、成果を残す確率が高い。
よほどある分野において超人的な才能がない限り、新しい仕事に切り替えることというのはせっかく作った土台を諦め、ただでさえ限られている時間を投じて新たな土台に作り直すことだ。ペナルティ必至だし、確率的に活躍できる可能性が低い。少しでも希望があればできるだけ避けたい道だ。
学生の時に滅多に実感できなかったが、時間というリソースは本当に等しく誰にでも有限である。サンプルを大きく増やすと必ず正規分布に従うように、赤裸々残っている時間に何かができるか逆算で決まっており、工夫すればなんとかなるレベルの問題ではない。そうすると、残される唯一合理的な選択は、現状を壊して作り直すではなく、いかに無駄をなくし、与えられたものの価値を効率的に最大化するところなのだ。
